認定こども園 めごたま 井上亘
(認定こども園めごたま 園長 井上 亘さん)
子供たちから「亘隊長」の愛称で呼ばれ、親御さん世代にも絶大なる人気ものの、認定こども園めごたまの園長、井上 亘さん。今でこそ子供たちと遊ぶ姿が微笑ましい園長さんだが、元々、幼児教育に興味は全くなかったという。 今から20年前、会社員として業績という勝ち負けにこだわり生きていくことに疑問を抱いたときに、出会ったのは“環境教育”という考え方でした。 環境教育の場として、全国あちこちを見て回る中で、両親が経営していた保育園があったこの金山町を訪れた際、一目惚れ。両親に頭を下げても来たかった金山町へ、園長として千葉県から移住し20年。 環境教育を通して見える金山町の姿や、亘隊長のこれからの想いを伺いました。
―金山町に移住してきた経緯を教えてください。
- 井上:
- 今から37年前に、当時の金山町の町長さんからの依頼で、千葉県我孫子市にある「めばえ幼稚園」を誘致という形で、両親が金山町に来たことが元々のご縁でした。 30歳まで会社員だったんです。会社を辞めて、金山町に来たのは18年前に、女房と子供たちと移り住んで、この仕事を継がせていただきました。
―では元々、幼児教育に興味があったということですか
- 井上:
- 全くありませんでした。千葉にも両親が経営する幼稚園があり、両親が一ヶ月に一度、金山町に通ってきていたんです。それで19年前に「山形の園をやらせてくれないか」と両親に頼んで移り住んで来た
- んです。 大学を出て会社員として、仕事効率をどう高めるかという「オフィスリニューアル」の仕事をしていました。いろんな事業所に行き、営業の人にはこういうレイアウトですねとか、設計の人にはこうこうのがいいですねとか。仕事の特性によって違う、レイアウトやファニチャーを提案する仕事でした。 そういう仕事をやっていて、それはそれで楽しかったんですが、結局ライバル社があり勝負なんですよ。どっちかが勝って、どっちかが負けるっていう、そういう世界でずっといるのは嫌だなって思っちゃったんです。 何故嫌かって、一番の原因はおそらく子供が生まれたときで、子供をどこで育てようか、どう育てようかっていう子育てのタイミングと、その勝ち負けというものに、ほとほと嫌気が差したということ。
- あとは大学からしていたアメリカンフットボールを、社会人になっても趣味でしていたんですが、当時、所属していたクラブチームが、2年連続で日本一になったんです。それまでは勝ちたかったんですよ、勝ち負けの世界でずっと生きてきたし、勝つことは良い事だと教えられてきたし「勝ちたい」と思ってやってきたんです。フットボールも仕事が終わってから一生懸命やっていたしね。それで2年連続日本一になった時に「えー」と思ったんですよ。あんなに望んでいた日本一ってこんなもんかと……。結局、心の奥底からの満足は至らなくて、これずっとやっていくのは嫌だなと。
- それはイコール仕事もそうです、「勝ち負け」。勝ったとしてもその瞬間だけの喜びで、また次の日から戦い。そして、人の失敗は自分の喜びで誰かがこければ自分は喜ぶわけ。そういう世界でこれから行くのは嫌だなって思って。 それから女房と話しをして、じゃあどんな世界があるかって2人でいろんな所を覗いていったんですよ。リサイクルとか環境系の仕事とか、その時に、環境教育学会という学会があり、講演会に子供も連れて見に行ったんです。いろんな学会の実践者の発表を聞いて「あっ!これだね!」と。教育は勝ち負けじゃない。特に環境教育は、学力を高めるとかそういうことじゃない。だから、この環境教育というのをやろうと、女房と決めたんです。
- どういうフィールドがいいかって見渡すと、そういえば山形に幼稚園やってたよね。ちょっと見に行ってみようかと(笑)。約20年前にここにきて、金山のこの幼稚園と金山の町を車で周り、ここはもう最高だと。ここを拠点に環境教育をやるということを、これから先のライフワークとしてやっていこうと女房と話しをして、両親の所に話にいったんです。「あの園をやらせてくれないか」と。
―迷いが出てきた人生のターニングポイントで、出会った場所としては……。
- 井上:
- 最高!こんなにいい場所ねぇなって。実は俺はもう、行き当たりバッチリですから(笑)。
―バッチリ?(笑)
- 井上:
- そう、行き当たりバッチリなの。とにかく、やろうと思ってやり始めたことが、たまたま上手くいく幸運の連続で、そういうことだけです。ただね、意図はあるんですよ。環境教育やりたいって、ここだけじゃなくていくつか見に行ったんです。それで、やっぱり金山が一番いいねって。
―金山町が一番いいと、引き寄せられたポイントはどんなところでしたか?
- 井上:
- 雰囲気ですね。これは論理的な感じじゃなくて、ピーンと来たのよ(笑)。これは説明出来ません、いいと思っちゃったの、いい感じだった。 それから通信の大学を入り直して、幼稚園の教員免許を取って、それでここの園長という仕事を継がせていただいた。 だから、昔から幼児教育をやりたかった訳じゃないし、30歳になって変わったんだよね。幼児教育をやりたいとは、小さい頃から全くといって興味は無かったですね。逆に嫌でしたね。親父が「チーチー、パッパー」みたいなことして、あんなのは大人の男のやる仕事じゃないと思ってた。カッコ悪い、恥ずかしいと。どっちかと言うと、自分がこんな風にやるとは思わなかった(笑)。 今、最高に楽しいんだけどね。俺ってこんなに子供が好きだったんだって、自分が自分で思いますけど。でもそれも50歳になったし、30歳から約20年ここで暮らしてきた結果そうなった訳で、元々子供が好きでとかそういうことじゃないです。
―金山町に移住という形で、来てみての印象はいかがでしたか?
- 井上:
- いいですね。未だにいい感じです。すごく影響を受けた人が、この金山にも何人もいるんですけど、農家の人だったり、または林業の人だったり。土に根ざして、理屈よりも生き方そのものがスゲーなぁっていう金山の人たちから影響を沢山受けたんです。学者さんとか、俺は全然ピンと来ないんですよ。ここで生きている農家の人か、林業家の人か、普通にいる消防団の仲間とか。そういう方が、ずっとグッと来るんですね。カッコイイんだよ!! 言葉の力強さとか、本質を突いているとか、うわべだけじゃない力強さとか。そういうものを金山町に住んでいる人たちから、すごく影響を受けていいなって。あぁなりたいなってね。
- これは中々、金山に住んでいる皆さんもあまり自覚していないし、それを拠り所にするのは難しいと思います、あまりにも当たり前過ぎるから。でも、俺はよそ者だし、そういう生活を知らなかったから、すごく影響を受けたし、未だにそうなりたいと思いますよね。
―そこに近づいていると思いますか?
- 井上:
- いいえ、全然。まだ全然ダメですね。だから、これからどういう方向にするかっていうのも、最初に金山町に来た時とあまり変わってなくて。まぁ何やりたいかって短的に言うと、この金山町をフィールドとして、地域循環型の社会を作りたいっていうのが俺の目標なんです。 地域循環型社会っていうのは、元々、金山にあったわけですよ。“衣・食・住プラス、エネルギー”を近場のもので賄う暮らしっていうのは、ここで何百年もあったわけじゃないですか。そういうことを未だに大事にしている人たちって言うのがここにはいるわけですよ。 あとは、それを意識してやっている人もいるし、そうでなく意識せず気づかずにやっている人もいるんだけど。そこを何とか意識化して、これから先の金山町っていうのは、そういう町を目指しましょうということを、園を中心にして幼児教育とか環境教育から、具体的な行動としてそういう仕組みを作りたいと思っているんですよね。
- 今、この建物と町の保育園の2つで認定保育園なんですが、施設を一元化しましょうという話が出ていて、これが一つの大きな転換期になると思っているんです。 施設を建てるということは、その建てた施設は50年間。その建物の寿命がある限り、物理的な環境って決めちゃうでしょ。立地とか環境。ということは、50年後の子供たちに対してどういう幼児教育を施行するかということを、今決める立場にいるということなんです。だから、ものすごい大きな転換期だと思うんですよね。
- だからここで、地域循環型社会に金山が向かって行く仕組み、核となるような仕組みを幼児教育の場を通して実現したいというのが、今の近々の夢なんです。
―夢へ向かうにあたり、うまく繋がっているのかなという感じを受けますが、その中での躓きはありますか?
- 井上:
- 躓きというのは、もっと現実的なところで色んな問題って起こるんですよ。子供が怪我しちゃったとか、誰ちゃんと誰ちゃんが喧嘩したとか。そういう具体的なトラブルっていうのはずっとあるわけです。
- それは、地域循環型社会を施行するということとは別に、日常の課題というのはいっぱいあるわけよ。それは、もうしょうがないよね(笑)。 それは避けて通れません。人間である以上、そういう問題はどこに行ったってあるし、会社でもあるし、家庭でも地域でも。この園だって、どの園にだってあるし、でも、そういうことを一つ一つちゃんとやっていかないと信用は築けないし、そういう信用の上に、じゃあ循環型社会を作りましょうといったときに、受け入れてくれるかどうかっていうのは、日常の暮らしぶりとか。特に金山はしっかり見ていますからね。
―そういった中で、価値観を合わせていくことは難しいのではないかと思うのですが。
- 井上:
- 結局、今はね。お金という価値観で囚われるんです。お金が入らないとダメだって思い込んでしまっている、ここが一番の大きなネックです。 なのに、お金は大手資本に吸い取られているんですよ。エネルギーも食料も、全部。だから、この仕組みを変えたいんです、お金は地域の中で回そうよって。地域循環っていうのは、短的にいうとお金もここで回る。そしたら日本円じゃなくてもいいし、地域通貨でもいいんだよね。だから、投資とかお金儲けではなくて、生きてくための仕組みとしての貨幣があればいいわけで、なるべくここで回る仕組みを作ろうよって思うんです。
―では、金山町にはそういう素材があると?
- 井上:
- いや、まだ分かりません。それはつまり“お金”というものに囚われているのは、金山の人ばかりじゃなくて全世界もそうでしょ??そこで囚われているのに、ここでお金をまわそうと思っても「それじゃ生きていけないよ」っていうのが大体普通の感覚です。 だからそうじゃなくて、じゃあ子供たちが食べる食べ物は金山町で採れたものを、金山の農家さんにお願いする。ここだけでも回しましょう、子供の為ならいいでしょ?って。まずは、エネルギーも加積燃料を買ってくるんじゃなくて電力会社から電力を買うのでもなく、ここで木を燃やして温まりましょう。じゃあ木を採ってきて、子供のためなんですからっていう風に、ある意味、子供っていうのをキーにして、“子供のために、アレをやりましょう”って。
- だから、俺がそれを言うんじゃなくて、“子供のために”そういう循環型社会を作って行きましょうよと、今、言い始めているんですけど。 建物を建て替えることをキッカケに、そういう仕組みを作りたいと思っています。でもそれは、ただ俺が思っているだけで、これを、お母さん、お父さん、一般町民の方、町会議員さん、町長さん、役場行政の皆さん。みんなにコンセンサスを作っていたい。“合意形成”ここが大事なんです。 これは分かんないですよ。どっちに行くか。「いやぁ~、亘隊長、また変なこと言ってるよ」「また夢みたいなこと言って」って(笑)。 でも、そういう議論をしていって色んな意見があっていいと思うんですよ。でも、そこで色んな議論をして、“じゃあ、こういうものを作ろう”って、合意形成を何年かかけて作っていかなきゃいけないと思っていて、だから、すごい大仕事なんですよ。全く違う方向に行っちゃうかもしれないし、今が分かれ目です。だってそれが、50年間の物理的環境を決めちゃうんですからね、子供たちの。金山町の全ての子供が来る施設だから。 逆に自分一人の想いだけで、決めちゃいけないと思っています。みんなで想いがあって、色んな意見を納得するまで話し合って「じゃあ、こうすっぺ!」みたいなものを決めなきゃいけない。だから、割と大変なんですよ。思い通りいくかどうか分かんない。答えのない問いに対して、これから向かっていくわけです。
―今が正念場ですね。
- 井上:
- 正念場……いい言葉です。正念場です。全然違うものになる可能性もあるし、そういう方向になる可能性もあるので、ここあと何年かが正念場。
―その50年先のものを仕組みにして形に出来るのは、金山町だからだということですか?
- 井上:
- “みんなの子供を、みんなで育てる 大きな家族・金山町”というキャッチフレーズを、この間、みんなの前で提案しました。自分の子供を自分だけで育てるんじゃなくて、自分の子供も含めてみんなで育てようよ、それは大きな家族でしょ、それが金山町でしょ!!というような意味なんです。
- でも、昔はそれが当たり前だった。それを忘れちゃっている。だから、お母さんと子供が家に2人で母子密室になって、子供を叩いたり、お母さん悩んでしまったり。だけど昔そうじゃないじゃん、子供は隣近所みんなで育てたじゃん、そういうことだったんです。食べ物もみんなで、いっぱい作ったものをお裾分けして、そういうこと当たり前に取り戻す仕組みを、園の中に大きな家族として取り戻していくと。 だから、”金山らしさを本当に追求していくということ”だと思うんですよ。金山らしさをとことん追求すると、俺はそれが世界レベルになると思う。何故かと言うと、ここでしか出来ないから。アメリカとかヨーロッパで出来ますか?って言ったら出来ない。本質は共通しているけれど、具体的なやり方は、ここの地域資源と人間力を掛け合わせたものしか出来ないです、それは金山町固有のものだから。
- この間、スウェーデンの方が来てシンポジウムをしたのね。その時にスウェーデンの人が「環境教育っていうのは自然体験だけじゃダメだ、これ半分。もう半分は、民主的なアプローチ」だと。 なるほど、さすがスウェーデンだなと思ったね。どっちかというと、自然体験だけをすればいいような感じあるけれど、でもそうじゃなくて、本当はこの民主的なアプローチ、民主主義の教育。つまり、自分の意見をちゃんと言って、相手の意見を聞いて、お互い議論を尽くして納得したら、その後は、協力しますと。自分の夢を仲間と共に実現していくっていうのが、民主主義でしょ。この教育がないと、自然体験だけ与えてもダメ、このバランスなんです。民主的アプローチというのは、自主性と団結性ですから、その人のやる気とか能力と、団結性、繋がり力とか協調性、こういう教育も合わせてやらないとダメです。
- 民主的な教育、民主的アプローチっていうのは、スウェーデンではしっかり幼少の頃から教育されているんです。そこに自然体験っていうのがあって、合わさってはじめて地球レベル、地球環境レベルで物を考えられる人間になるっていうことなんです。単に自然体験だけ与えたってダメだって、民主的アプローチをちゃんと伝えなきゃいけないんです。
- だからと言って、幼児教育だけじゃダメなんですよ。小、中、高、大。大人、社会。むしろ、大人社会が民主的なアプローチしていますか?国会どうですか?恥ずかしいよね。大人がああいう姿をしているのに、何で子供に「話し合ってちゃんと決めろ」って言えるの?こっちから見ると「ふざけんな」ってなっちゃうわけですよ。ちゃんと大事なことを話し合って決めてよ、大人が。 だから、この園をどうしていくかっていう合意形成のプロセスが、まさに“自分は何やりたい”“あなたは何やりたい?”という、その合意形成が出来たら、決まったことに、みんなで力を合わせてやるよっていうね。普段、子供に求めていることを、大人がやるっていうことなんです。大人が出来ないんだったら、子供に言うなよって。英会話を子供に教えた方がいいっていう母ちゃんがいたら、その前にあなたが英会話を勉強して、あなたがグローバルな人間になりなさいって言いたい。そしたら、子供はその背中を見て、判断する。その方が、ずっとお母さんも輝くし、ずっとイイと思いますよ。自分の願望とかを子供にのっけちゃうんじゃなくて、自分でチャレンジした方がずっといいです。 言いたいのは、大人が合意形成、民主的アプローチをちゃんとすること。そのことをもって、子供にそういうことを求めていくと言うことなんですね。だから、大変なんですよ。例えば、強いリーダーがいてバーンと決めちゃうとか、または「もういいよ、俺関係ないから。お前ら勝手にやってとか」これ、楽なのよ。
- だから、今後どうやって進めていくかは、本当に大事だと思うんだよ。でも、金山って割とそういうところは民主的ですよ。色んなことを話し合って、決めていくという場面も沢山見ているし、スゲーなって思いますね。一方で任せてしまっているところとか、リーダーを批判したり、町に求めるだけで自分は何もやらなかったり、そういうのもある。でも、日本全国おそらくどこ行ってもそうなので、別に金山だけが、そういうわけじゃないと思うんです。
- 今、行政の若い人たちとかと一緒に“子ども子育て連絡会”というのを作って、教育委員会とか福祉課とか、保育師さんとか。あとは民間の我々とか、子育てサークルのお母さんとかNPOの人とかが、毎月10人ぐらいで集まって話をするんですが、割と諦めちゃうんだよね。「こういう風なことをしたいけど、何回言っても町が応じてくれないから、もうダメだ。」って言うんですよ。諦めちゃう……無理だって。
- そうじゃなくて、仲間作って知恵出し合って。今までこうやってきたけれど、違うやり方あるんじゃない?とか、もしくは一緒に言ってあげるよとか。あの人も巻き込もうみたいなことで、変えられるんじゃないかって、そういう具体的な案件がいくつもあるんです。そういうことも、民主的なアプローチだと思うんです。具体的な変化を起こさないと、口で文句ばっかり言っていてもダメなんです。 中央公民館も建て替えようという話がある中で、子育て支援の拠点と公民館ってすごく深い関わりがあるでしょ。子育ての視点から見ると、こういう機能も欲しいとか、言っちゃおうぜっていう話になっています。だって、言わないと分からないんだよ、行政は縦割りだから。それでみんな悩んでしまっている。悩んでいたらもったいない、もっとみんなでやろうぜって。役場の人だけで悩んでないで、やっぱり中央公民館は、みんなが集まって欲しいわけでしょ?色んな多機能であって欲しいじゃん。いいじゃない、夢だから。やるやらないは別にして、言わないと、伝わらないじゃん、とかね。
- それを考えていると、ワクワクしてくる。いいね、いいね。俺たち何か出来んじゃねぇーか!みたいな気持ちになる。 それを口に出すだけじゃなくきちんと、書面にする。「私たちはこう考えます」とどうですか?と、何かやれそうな気になってくるじゃん、というのをやってこうと思っているんです。
―その熱意の根本にある、一番大事にしていることは何ですか?
- 井上:
- “自分らしさを仲間の中で発揮する” 子供たちには、そういう人生を送って欲しいんです。 この園の保育理念でもあるんですが、自分らしさって自分の心の奥底からやりたいと思うものじゃないですか、誰かから言われて思うもんじゃないでしょ?自己実現とか言うじゃん。 それを、ただ自分だけでやるんじゃなくて、仲間と共にやって欲しいんです。さっき言った民主主義と同じなんです、自分の夢を仲間と共に実現する人になって欲しいんです。だから、自分自身もそういう人間でありたいんです。 俺は循環型社会を作りたいという夢がありますが、それは俺一人じゃ出来ないんです。それを仲間や理解者を作って、自分の夢を自分たちの夢、私の夢を私たちの夢にするのが、合意形成、コンセンサスなんです。それを仲間と共に実現していくというのは、あと実行力のところでしょ? 今やっているのは、私の夢を私たちの夢にするっていうところを今やってるわけです。ここすごく大事!! 今いる子供たち、一人一人にもそういう人生を歩んで欲しいんです。いい大学に入ったとか、いいところに就職したとか、そういうことじゃない。心の奥底からやりたいことを、仲間と共に実現する人になって欲しいんです。
- じゃあ、心の奥底からやりたいことって何なんですか?って、それが短的に現れるのが“遊び”なんです。遊びっていうのは、誰かに言われてやるんじゃない、やりたいからやっているんです。内発的な動機であり、純粋な意欲なんです。遊びにとことん熱中して達成感を得るというのが、人生の基本なんです。それを大人になっても、自分の内発的な動機を仲間と共に実現していく、これは家庭でも地域でも、会社でも同じだと思うんです。 それを目指して、でも、その方向性は色々あっていいんですよ、みんながみんな循環型社会を目指さなくてもいいんです。だから、私の夢を私たちの夢にするというのは結構難しいことなんです。 民主的な教育、民主的アプローチっていうのは、スウェーデンではしっかり幼少の頃から教育されてるんです。そこに自然体験っていうのがあって、合わさってはじめて地球レベル、地球環境レベルで物を考えられる人間になるっていうことなんです。 単に自然体験だけ与えたってダメだって、民主的アプローチをちゃんと伝えなきゃいけなんです。
キリッとした表情で語る合間に、満面の笑顔を覗かせるにグッと心を惹く力を感じました。
この本気と笑顔に、夢を叶える仲間が集まってくるのかもしれません。
本気で夢を実現するときに、共に学び、笑い、自分に出来ることをして、何より楽しむこと――。
大人が忘れてはいけないことを、教えてもらったような気がします。