チーム道草
(山形大学サークル 「チーム道草FirstStepプロジェクト」の皆さん)
山形大学では、平成17年4月に最上広域圏内そのものを素材にした授業科目として創出し、山形大学のキャンパスとして活動を展開する「エリアキャンパスもがみ」がスタートしました。
地域と連携した学習の一つとして、地域の抱える問題を目の当たりにし、大学生の目線で考え、行動し地域の活性化を図ることが目的の基礎学習であり、学生たちは、最上広域圏内の中から金山町を選び、1年に渡り学習(フィールドワーク)の場としてきました。
この授業をキッカケに、平成24年にサークル「チーム道草」を結成。ただ、学生それぞれが、はじめから金山という地域にこだわりがあったわけではありません。学習を通して、金山町の人のあたたかさに触れ、地域への思いを知り、その自然と文化を体感するうちに金山町への愛着が生まれ“このままで終わらせたくない”という思いから活動を決意。
サークル活動という学習を越えた枠で、金山町との関わるようになった彼らの思う気持ちを聞いてみました。
―金山町との出会い
「エリアキャンパスもがみ」の授業にあたり、4月の頭に山形県内の各地域の方々が、「自分の街のいいところはこんなところで、こんな事をやっています。 来てみて下さい。」という風に、魅力を伝える説明会がありました。
その中で金山町のプレゼンテーションやパンフレットを見て、何となくいいかなって思って来てみたのがキッカケでした。みんなもそんな感じだと思います。
だから特に「○○だから、ここがいい!」というような事ではなくて、雰囲気で何となく金山町がいいかなって思って来たので、授業に参加した人は皆同じような感じだったと思います。
―フィールドワーク(学習)の場として“金山町”を訪れた時の第一印象は?
自然がいっぱいで、人があたたかくて、すごいいいところだなというのが第一印象です。
一番いいと思うところは、やはり人のあたたかさというところ。ホームステイでもあたたかく受け入れてくれる人たちがいて、ホームステイ先の方々とお話させていただいて、優しさや心の寛大さというのを感じる事が出来ました。
金山町の方々からも積極的に話しかけてきて下さるので、とても話しやすい雰囲気があったというのが印象に残っています。
―フィールドワーク(学習)を通して、心がけていた事は?
自分たちで地元のものを見るというよりも、地元の方の声を聞く事を大切にしています。
色んな物事に対する考えというのがあると思うのですが、その考えを聞いて自分がどう思うかとか、自分との考えとの比較というのは、結構意識するようにしています。
今回のフィールドワークの際にも、沢山お話しさせていただいて“町づくりに対して”の様々な考え方を聞いて、その事を自分も考えてみるということをしています。
―では、学習の場を飛び出し、サークル「チーム道草」を結成されたキッカケは?
ホームステイをしている時に町の方と話す機会があって、金山町の人たちが自分の町のことを誇らしく活き活きとした表情で話しているのが印象的で、その事が「もっとこの町を知りたいなぁ」とか「この町には、他にどんなところがあるんだろうなぁ」と感じた事で、金山町への興味が湧いてきました。
そういう事がキッカケで金山町を訪れる度に、色んなところに行ったりするんですけど、自分が行けなかった時に、他のメンバーから「金山町のこんなところに行ってきた」とか聞いたりすると、悔しくなったりして。「俺、イザベラバード行ってねーぞ」みたいな(笑)。そういう事もあって、好奇心を煽られて、どんどん金山町の事を知りたいなって思うようになってきましたね。
それから、「チーム道草」というサークルを結成するにあたって、よく思い出すエピソードがあって……。
フィールドワークの後期に、「今日、帰ったら次はもう来ないよ」っていうときに、金山町の子供たちが、当時フィールドワークで来ていたメンバー15人全員に、手紙を書いてくれました。折り紙で「ありがとう」「大好きだよ」とか「また来てね」とか書いてくれて、メンバーの一人一人に渡してくれました。
そして最後は、バスに乗っている自分たちを追いかけて手を振ってくれて……。そうなった時に、「ここで終わりにしたら嫌だな」って「また来たいな」と思ったのが一番印象に残っていますね。
―現在のサークル活動における基盤は何ですか?
一番は“やってみたいなって思うこと” “楽しいなって思うこと”をやるというのがチーム道草の基盤であり、一番大事な考え方なのかなと思っています。
金山町では、学生がやりたいって言ったことをやらせてくれたりするんです。メンバーは地域教育学部が多くて、「子供たちに、こんな風な事を教えてみたいね」という話が出たときに、町の方が「じゃあやる?」みたいな感じで話がどんどん進み、土日のお休みのところを先生方に出向いていただき、場所を借り、全面サポートのもと実現する事が出来ました。
自分たちの“やりたい”が原点にあって、それを受け入れてもらっているなと実感出来る事が多くて、自分たちもどんどんやりたい事を言えるし、町としてもそれに答えて下さっていると思います。
もちろん「それは、ちょっと……」と言われる事もありますけど、それを含めて勉強になるというか、地域活動を町の方からお願いされてやるのとでは、違った角度から経験が出来ているのではないかなと思いますね。
―金山町でのサークル活動では、どんなことが楽しいですか?
金山町に訪れるたびに、新しい場所と出会うのが楽しみで、今日もここ(蔵史館)に初めて入ってみましたが、一つずつに感動があるんですよ。それに「今日は誰々さんが居るんだ」とか「誰々さんにも会えるんだ」とか、人と触れ合えて顔を見られるのも、金山町に来るときの楽しみにしています。
以前、ホームステイをしている時に町の方と話す機会があって、金山町の方が自分の町の事を誇らしく、活き活きとした表情で話しているのがとても印象的でした。その事が「もっとこの町を知りたいなぁ」とか「この町には、他にどんなところがあるんだろうなぁ」とか、金山町への興味が湧いてきましたね。
金山町を訪れる度に色んなところに行くんですが、自分が行けなかった時に、他のメンバーから「金山町のこんなところに行ってきた」とか聞いたりすると、若干悔しくなってたりして、「俺、イザベラバード行ってねーぞ」みたいな(笑)。
そういう事もあり、好奇心を煽られて、どんどん金山町の事を知りたいなって思うようになってきましたね。
それに、食べ物がすごく美味しいなと思って(笑)。
いつも金山町に来る時に「今日は何を食べる予定なの?」とか聞いて、地元の美味しい蕎麦屋さんやラーメン屋さん、ホームステイ先でいただく山菜料理は嬉しいですね。山菜は一人暮らしでは、まず食べる事は出来ないものがいただけるので、食べ物の事とかを考えて来るのが楽しみの一つになっています(笑)。
―現在の活動目標は?
今の「チーム道草」の目的は、授業の時の目的とは変わってきたところがあります。
当初、フィールドワーク自体は授業として町との関わりの中で、“感じたこと 感動したこと 思ったこと”を最終的に提案する事が目的であって、学生として提案者(アドバイザー)としての話や役割が主でした。
サークルとして活動するようになってからは、アドバイザーからプレイヤーになったというか、中に入って一緒に何かするという視点になったので、そこで何かを学び得るというよりかは、“一緒に調整し合ってバランスを取りながら、何かを形にする”という事で、授業とはまた違う感覚を、メンバーそれぞれが感じながらやってきたのかなと思っています。
「みんな、どうかな?(笑) でも、授業と違うくない?サークルが始まってからは。」
「うん。 違うね。」
授業は受けに行っていた感じがあるけど、サークルだと自由というか、自分たちのやりたい事が出来る。強制かそうじゃないかという意味で、モチベーションとかも違いますしね。
授業という視点で見てしまうと、単位に見合わないとか楽そうとか、他のチームとの比較になってしまうけれど、授業と離れたところでサークル活動をしていると、自分たちでやりたい事をやっていて、楽しみが見えてくるので、授業じゃ出来ない事に価値がある。
だから自分たちの原点は、町を訪れるキッカケと町の良さに触れるキッカケとしてはフィールドワークがあったんですけど、そこからサークルの活動に至ったのは、フィールドワーク自体の趣旨とはまた違うところで感じるものがあったからだと思います。重なる部分も、もちろんあったとは思うんですけど。
―今の活動の中で、物足りないと感じている事はありますか?
今の活動自体は結構満足していて、今の時点ではあえて何かを直すという感じではないんですけど、だからこそ“常に自分たちのやりたいことって何だろう”というのを探しているんです。
それで最近思うのは、来年度に活動出来ればいいなって思っている事があって、今まで地域の中でも繋がったことのない層の方々と繋がっていったら面白いんじゃないかなって思っています。
地域の中で活動していても、なかなか触れ合う機会がない人たちを、自分たちを通じて、地域の方たちに知ってもらい、地域の中で熱が高まっていけば面白いんじゃないかなと思っています。
それから、金山町は金山杉が有名なので、その杉に触れてみて、色んなものを作ってみたいと思っています。
金山杉自体は高いので、その廃材を利用したりして、地域の人や子供たちと物作りをしてみたいなと思っています。
また「チーム道草」としては、地域のものをテーマにして子供たちと触れ合う機会を増やしたいという気持ちがあって、谷口がっこそばを利用して、泊まりがけで勉強会とかが出来ないかなと考えています。
ただ勉強会をするだけではなく、このあたりの地域には大きな大学が無いので、大学生と触れ合いの中で、将来のキャリア形成という部分でも、自分たちが少しずつ見せてあげる事が出来れば、子供たちの選択肢も広がるし、可能性もどんどん広がっていくのではないかなと思う事があります。
ただ、自分たちは専門的な教員とか教える側ではないので上手く教えるという風な事だけではなく、学習支援を行うにあたって子供たちといかにコミュ二ケーションを取るか、いかに自分たちが持っている世界観を植え付けるのではなく見せてあげられるかということも、今年の夏を目処に計画してみようと思っています。
―「やってみたい」と思う事を実現していく中で、出てきた課題もあるのでは?
今年1年、本格的に金山町で活動するようになって、町の方に相当迷惑を掛けているな、大目に見てもらっているなと感じることは沢山ありますね。
特に移動時間とかを甘く見てしまうことが多くて……。調べて2時間で行けると思って、2時間ちょっとで計画したら道が混んでいて3時間かかってしまったりとか。授業だと大学の先生方がスケジュールを組んで下さった中で活動をしていたときとは違い、自分たちで実際に計画して行くとなると「この時間に、この場所でお約束します」ってやっても、なかなか時間通りに行かなくて……。
直接、怒られたりはしなかったんですが、様子を伺いながら行くと「やっぱ、怒ってる……」みたいな……とにかく謝りながらでしたね。
授業とかの枠の中でやっていると、いかに枠を作ってもらっていたかに気付けないんですね。
そこが当たり前だと思っていて、実際に自分たちでやってみても、相手の状況を理解しての行動に繋がらないところがありますね。
金山町で対応してくださる先生方の忙しい時期に相談事をしてみたり、除雪の忙しい時期に連絡してしまったり……。
でも、その中で一つ感じたのは、直接おもむいてお話しをするのと電話だけでお話するのでは印象が違うことに気が付きました。
最初、企画を立てて電話でお話ししても、全然「うん」って言ってもらえず、ほとんど話が進まない状況でした。そんな時に自分たちで出向いて「お願いします」とお話をさせてもらったら「全然いいよ、分かった」と言って下さったので、そこも学んだポイントの一つだと思います。
でも、なかなか学校の行事などと重なることもあり行けなかったりする事もあるので、行ける時は自分の足で出向いて交渉したほうがいいかなと考えています。
色んな方との関わりの中で感じるのは、金山町は受け入れ方が本当に上手いなと思います。
他の地域では「大学生が来てなんぼ」というところがあるような気がしていて、自分たちとしては「大学生が出来る事の可能性」をある程度信じてないとやっていけない部分もあるんです。それでも「やるからには成果を」とか「居ても3・4年でしょ?」」という風に見られる雰囲気があるように感じてしまいます……。それで、学生の意識が下がってしまって、次に繋がりにくいような状況が生まれる事もあると思うんです。
金山町でも学生の甘さは変わらないと思うんですが、そんな中で「やってみたらいいよ」って、自分たちがやってみたいという事をやらせてくれるなっていう実感はありますね。今、金山町の方々と関われている現状が狙ってたどり着いたところではありません。
町の多くの方が「やりなよ」って言ってくださる流れの中で、今の現状があるのだとハッキリ言えると思います。
―受け入れてもらえる環境の中で活動をする皆さんの気持ちに、何か変化はありましたか?
去年、「チーム道草」の結成総会をしました。その時に「みんな金山町で、何をしてみたいか」という話しをしたのですが、さっきはみんなから“やってみたい事”が出ましたけど、去年は「とりあえず、遊びに行きたいね」とか「キャンプしたいね」とか「金山町の事を知らなさ過ぎるから、ちょいちょい遊びに行ければいいんじゃね?」とか、そういう風な感じでしかなくて。
金山町に訪れる機会を重ねていくうちに「次はこんな事をしてみない?」という話しが繋がっていって、特に大学の助成金を取った8月以降から活動自体が加速していきましたね。
どちらかというと最初は、代表が突っ走ってやっていく形が多かったんです。
「じゃあ、みんな行く?」って言ったら「楽しいから行く」という状況だったんですが、そのうちに
「みんな、やりたい事やりなよ」って言いだしてから、メンバーそれぞれがやりたい事を見つけて、学習支援の企画やCM大賞を担当する人が出てきました。
それぞれが思うやりたい事を出来てきた事が、今まで続いてきた要因の一つかなと思っていて、あのまま一人で突っ走っていたらここまでにはならなかったかなと……どこかで限界が来ていたのではないかなと思いますね。
―お話しを聞いていて、皆さん本当に真面目ですね(笑)
やっぱりそこも、チームの雰囲気として好きだなって思うところではありますね。ある程度、考えるところは考えて、ふざけるところはふざけてみたいな。
町が良かった言うところもありますけど、次に町に来る事に価値を感じられる人たちというか「子供たち、可愛いよね、また来たいね」「そうだね」って言えるようなメンバーが、ちょうど15人揃ったというラッキーもありますよね。
そこから深く考えられるところもあるし、気付くところは気付くし、リードというよりはフォローアップが上手いのかなと。誰かが無茶な事をしていたらフォローをしてくれるとか、そういうのが上手くて、なんだかんだここまで来ている感じはありますね。
それに、結構泊まったりする機会も多いので、家族みたいな感覚もあります。
そういう繋がりが生まれた陰には、田茂沢地区でのホームステイの影響は大きいですね。
他の地域ではホームステイの受け入れ先がなかなか見つからないらしくて、フィールドワークを主催する学校としては、やはりホームステイというのが理想的な形なので、やってほしいという要望はあるんですけど。金山町はそれを受け入れてくれる数少ない地域で、特に田茂沢地区ではホームステイをずっと受け入れてくれて下さっているんです。ホームステイでずっと一緒に泊まると、全然知らない人でも、短い期間で仲良くなれたりしますよね。
ビジネスホテルに友達同士で泊まって距離を縮めるのと、同じテーブルで食事をして隣の布団で寝るのとでは、距離感が全然違いますね。
―1年の活動を通してみて「今、やりたい事」は何ですか?
4月は新歓を頑張ろうと思っています。後継者探しですね。
まずはキッカケ作りで、金山町に一緒に来てサークルの輪に入ってもらえれば、興味を持ってもらえると思うんですけど、なかなか一緒に来る段階までには至らなくて……。
何とか一緒に一泊でもホームステイが出来れば、引き込めると思うんですけどね(笑)。
最初は「チーム道草」という名前を売りたい訳ではないので、自分たちで活動が終わったら終わったでいいかなとも思っていたんですけど、1年生が入ってきてくれた事で一気に愛着が湧いてきましたね。
その中で、来年もこの活動があればいいなという気持ちで出来る活動も出て来ますし。
「来年やれないことを今年だけやって、来年に出来なかったというのは、責任を果たせていないからやらせられない」という話もしてもらって、継続性を持たせることの責任も感じました。
だから、余計に続けていかなきゃという想いと、続けていかなければこの地域の方々に失礼だなという想いが今はあります。
やはり続けることを真剣に考えると、ネガティブな意味ではないにしても難しい事だなとも思います。
昨年は大学から助成金を受けて活動の幅が広がり、今年もなんとか助成金を取りたいとは思っているんですが、何年も同じプロジェクトに助成金が出る訳ではないので、それが無くなった時にその代わりにどうするのかとか。
今現在、自分たちは助成金がある中で、いい活動が出来たと言って終われるかもしれないけれど、その先の後輩たちが同じような活動、または今以上の事を続けていけるような環境を残していく事を目指すというよりは、自分たちでその環境を作っていってもらうためには、どうすればいいのだろうとか。チーム自体のレベルアップも最近は考えて、色々やってみたりはしていますが……難しいですね。
―この活動を今後、どんな風に活かしていきたいですか?
この1年、金山町で活動してきた事は“イコール”ではないのかなと。
いくら好きで金山町に来ていても、部外者である自分が金山に入って出来る事と、地元の方々が地元に帰って来たときに出来る事っていうのは、やっぱり違うのかなとは思いますね。
自分たちが地元に帰り、折れずに頑張って何とか成果を出すという事も一つあるとは思いますが、もしかしたら、大学生を受け入れるぐらいの歳になってから地元に帰ってみて、受け入れ側として地域や行政を繋げる役目になるのもいいのかもしれないなとも……。自分の手で地元や地域を変えるというよりかは、外部の人に楽しんで良くしてもらうという、そういう視点もありなのかなと最近は思いますね。
まだこの活動も2年目で、学部も専門的なこともやっていないので、そのぐらいしか言えないですけど、もし専門的な技術を身に付けられるような進路に就けるなら、一度社会に出てから30歳ぐらいになって受け入れを中心に地域活性をするというのも、一つのやり方なのかなとは考えています。
メンバーそれぞれがどこまで自分の地元が好きかとか、思い入れ方に違いはあると思います。ただ、間違いなく言える事は、金山町での活動はメンバーそれぞれの将来に影響を与えているという風には思っています。
金山町でやってみたいことをプレでも実践出来たら、地元でも再現してみたいとか、金山町の学校でも臨時講義などもやらせてもらったり、金山町で色々やらせてもらったりしたことで、得たものはみんな大きいと思いますね。
出会いのキッカケは当たり前なものでした。
子供たちの笑顔に惹かれ、金山町に訪れることになった学生たち。
「町の多くの人との関わりの中で、得たものは大きい」と語る彼らは、じきに社会へと出る。
社会へ出たとき、ここでの経験が生きるとき来るでしょう。
そう願わずにはいられない―。